あけましておめでとうございます。
今年こそ拉致被害者の帰国が実現してほしいと強く願っていますが、いま救出運動が誤った方向に流れていることに強く危惧しています。一部の運動関係者が、北朝鮮に大規模な経済支援を行って拉致被害者を返してもらおうと言っています。こうした発言は救出を遠ざけてしまい逆効果であるばかりか、新たな拉致を生みかねない危険極まりないものです。交渉事を全く分かっていないと言わざるを得ません。


なぜ逆効果なのか? 北朝鮮側が拉致被害者を解放する必要を感じなくなるからです。北朝鮮は2002年に5人を解放して以来、全く誠意を見せていません。それにも関わらず日本側が一方的に下手に出て巨額経済支援を行うとまで言えば、「じゃあもう少し頑張れば日本人妻の遺骨くらいで誤魔化せる」と当然考えます。交渉戦略として、稚拙の極みだと思います。たとえば古美術商と交渉するとき、「この作品を何が何でも手に入れたい。カネならいくらでも出す。でも安くして」と言う人はいるでしょうか? そんなことを言われたら、大幅値引きを考えていた古美術商は逆に少ししか安くできなくなってしまいます。
北朝鮮にも、「拉致被害者を返したほうが得だ」と考える高官はいると思います。ところが日本側があまりに低姿勢だと、不必要な譲歩と非難されることを恐れて言い出せなくなります。その結果、帰国できるはずの拉致被害者が帰国できなくなります。誤った戦略は、苦境にある同胞をさらに苦しめることになるのです。
そして、安易に巨額経済支援を行えば、北朝鮮は再び日本人を拉致します。北朝鮮は過去、アメリカ人を何度も拘束して、クリントン元大統領を平壌に呼びつけるなど宣伝上の利益を得ています。アメリカに対して何度もやってきた北朝鮮が、日本には遠慮するでしょうか? 犯罪者に簡単にボロ儲けする方法を教えると、更生するでしょうか? 答えは明白だと思います。
何よりも、北朝鮮に兆単位の巨額経済支援を行うことは国家を危険に陥れる反逆行為であり、絶対に許されません。北朝鮮が、アメリカに届く弾道ミサイルを廃棄する代わりに一定数の核弾頭保有を認められたら、日本は戦後最大の危機に直面します。公金による経済支援で危機を深刻化させるなど言語道断であり、問題外です。
そもそも、北朝鮮への巨額経済支援は国連制裁の解除なしに行うことができず、実現可能性が低いです。トランプ大統領は「ディール」がまとまれば解除せよと言うかも知れませんが、安保理常任理事国である英国とフランスが同意しない限り実現しません。両国はイラン制裁との整合性の問題がありますから、トランプ大統領が求めたとしても安易に同意できません。一部運動関係者が唯一の手段のように言っている巨額身代金支払いは、実は最初からできない可能性が高いのです。
では、拉致被害者救出のため、何をすればいいか? 答えは家族会・救う会・拉致議連が過去何度も出してきた声明文の中にあります。制裁です。制裁を強化すればいいのです。
朝鮮総連への破産申立てや、金正恩への制裁対象指定といった強力な制裁なら、それだけで北朝鮮を交渉のテーブルにつかせることができます。むろん最初の数か月は、「千年たっても許さない。戦争だ」などと威嚇してくるでしょう。しかし北朝鮮は、総連破産や金正恩制裁を解除させる必要があるので、半年もしたら水面下で話し合いたいと言ってきます。
それよりも低いレベルの制裁、たとえば高麗航空への制裁(日本国内での航空券販売を不可能に)や再入国禁止対象者大幅拡大などは、帰国できる拉致被害者の数を増やす効果を発揮します。北朝鮮が拉致被害者全員一括帰国に応じることは現実的にあり得ないので、少しでも救出人数を増やすべく粘り強く交渉する必要があります。そのとき、交換条件として解除できる制裁が多ければ多いほど、強ければ強いほど、救出人数を増やすことができるのです。それこそ、お金がないと何も買えないが、たくさん持っていればその分買い物ができるのと同じです。
制裁の具体策は、上記以外にもあります。詳しくは、松原仁先生が一昨年11月に政府に提出した「拉致被害者救出のための圧力強化に関する質問主意書」をご覧ください。北朝鮮制裁破りに関わる中国人が千代田区に日本事務所を持っている話など、マスコミで報道されていない生々しい情報も出ています。制裁に関する決定版の質問主意書です。
拉致問題は膠着状態が続いています。これまでのやり方は間違っていたということです。同じことをやっていたらダメです。過ちては改むるに憚ることなかれ。いまこそ徹底圧力路線に転換すべきです。

おほぞらにそびえて見ゆるたかねにも
登ればのぼる道はありけり
(明治天皇御製)
(明治天皇御製)

