松原仁先生が5月20日、最近問題になっている経営管理ビザの悪用を阻止するために、具体策を提言した質問主意書を提出しました。質問文は衆議院HPに出ています。
質問の狙いは次のとおりです。
質問一、三 高額療養費目的を隠して経営管理ビザを取得することは「不正な手段」と閣議決定レベルで明確にし、牽制するとともに捜査を後押し。
質問二、四、五 移民ブローカーが職業犯罪者であることを明確にし、捜査を後押し。
質問六 中国共産党幹部等によるマネーロンダリングを牽制。
質問七 資本金500万円という極端な下限を大幅に引き上げさせる。
質問八 日本語を解せず、倒産確率が非常に高い経営者を入れないようにする。
質問九 ビザ更新を拒絶された事例を明らかにして牽制。
質問十 現地調査を徹底させ、不正を見逃さないようにさせる。
質問七、八にあるように、日本語を話せない外国人でも資本金500万円の会社を登記して申請書類にもっともらしいことを書けば、経営管理ビザを取得できます。そして、国民健康保険の高額療養費制度を使えるようになり、日本人が納めた保険料から何千万円も受け取ることができるようになります。
すでに8年前の時点で専門メディアである日経メディカルの記事が、「患者に付き添っていた『通訳』と称する人物が数十枚もの健康保険証を持ち、待合室で患者の氏名を確認して手渡していたというエピソードも聞いた」と書いています。
読売新聞記事によれば、米国の同様のビザ(投資駐在員ビザ)を取得するには20万~30万ドル(約3000万~4500万円)程度の投資が必要とされ、永住するには最低80万ドル(約1億2000万円)以上の投資が求められるとのこと。500万円の異常さがよくわかります。
日本語を話せない外国人が500万円持ってくれば成功できるほど、日本市場は甘くありません。経営管理ビザでアルバイトは原則禁止されているので、食い詰めて犯罪に走る外国人が出ることは容易に想像できます。
★ 納得いかない政府答弁
残念ながら、5月30日に閣議決定された政府答弁書は、松原先生の要求を一部しか受け入れませんでした。
満額回答に近かったのは、移民ブローカーの業務内容についての答弁です。一般論と断りながらも、入管法、司法書士法、行政書士法の「罪が成立し得るものと考えられる」としました。仕事内容そのものが犯罪ですから、移民ブローカーは職業犯罪者です。窃盗団やスリ、詐欺集団と変わりません。日本政府の最も高いレベルである閣議決定として明らかになった以上、今後厳しい取り締まりが行われるでしょう。摘発に期待したいものです。
さらに、質問七の許可基準のあり方については、「経済及び社会の状況の変化に応じて検討すべきものであり、現に検討を行っているところである」と見直しを示唆しました。質問文にあるように、日本人でさえ開業費用の平均値は985万円です。日本の事情をほとんど知らない外国人なら、商売が軌道に乗るまで試行錯誤する期間は一般的に長くなりますので、相当な余裕資金が必要です。アメリカ同様、3000万円以上にすべきではないでしょうか?
一方、納得いかないのは、日本語能力に関する答弁です。質問八に対して「外国語を使用して行うことも認めることが適当であることから(中略)日本語能力を有していることは求めておらず」とのことでした。
ムチャクチャではないでしょうか? 確かに日々の業務は、外国語のみで行う会社もあるでしょう。しかし国税通則法で、税務調査の際の質問検査権が定められています。納税義務者は、税務署員による「この領収書はなんですか? 存在しない会社なんですけど」「なんで喫茶店の打ち合わせで30万円も?」「この外注先って社長さんの彼女ですよね?」といった質問に答えないといけません。会社経営は「ニホンゴワカリマセ~ン」では済まないのです。経営者も常勤社員も日本語が分からない会社など、あってはなりません。
それから質問十で、経営管理ビザの審査で実地調査を徹底するよう求めたことに対して、「事業の実態に疑義があれば」実施すると政府が答弁したことも納得いきません。審査は、現状がザルなのです。実態のない幽霊会社をデッチ上げて、大勢の中国人が不法に日本に滞在しています。たとえば、FNNプライムオンラインの5月21日の報道によれば、ビザのため設立された中国系企業49社が所在地とする大阪市内のビルに取材に行ったところ、人の出入りすら確認できなかったとのことです。酷い不正が横行しています。
実地調査は当面の間、100%実施すべきと考えます。むろん、いちいち確認していたら審査期間は大幅に伸びるでしょう。それでいいのです。ビザを不正取得した中国人にどんどん住み着いてほしいと考える日本国民はほとんどいません。政府の一部が暴走しているだけです。法治国家の本来の姿に戻るべきではないでしょうか?

言の葉の上にあふれてきこゆるは
人のこころのまことなりけり
(明治天皇御製)