あけましておめでとうございます。
今年も大勢の拉致被害者が、ふるさと日本で正月を迎えることができませんでした。拉致問題は、誤った戦略のため膠着状態に陥っています。
昨年暮れ、注目すべき動きがありました。12月13日に衆議院議員会館で開催された「北朝鮮の最新情勢を知り、全拉致被害者救出への方途を考える国際セミナー」で、自民党拉致問題対策本部長に就任した衛藤晟一先生が、圧力をかけなければ永久に拉致被害者を取り返せない旨述べました。下記動画の45:20からになります。
発言内容を、そのままのかたちで文字起こししました。
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我が党は、令和六年運動方針において、「すべての拉致被害者の即時帰国実現のため、あらゆる手段で全力を尽くす」との文言を採択し、本年の活動を進行してまいりました。
「あらゆる手段」とは何か。かつて安倍総理は、「対話と圧力」、その原則のもとに拉致問題に取り組んできました。しかし、ここまでずっと変化がなかったんであれば、もう一回本気で、この方途について我々は考えざるを得ないところにきている、という具合に思っています。
今までのままの圧力で、足りるのか、足りないのか。そうしたらどうするんだ、ということをですね、本気に考えなければ、永久に今の状況は変わっていかないだろう、というふうに思っております。今、そういう流れのなかに、いま我々が立たされているということを、十分認識をした上で、今日は一緒にこの集会で、議論してまいりたいという具合に思っています。
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よくぞ言ってくれたと、意を強くしました。これまで、「北朝鮮は困り果てているから、人道支援をすれば拉致被害者を返す」との誤った見立てのもとに宥和路線がとられてきたため、何一つ成果が出ませんでした。救出を遅らせ、被害者と家族の苦しみを増しただけでした。誤った戦略は、一刻も早く修正されるべきです。
そうしたなか、松原仁先生は北朝鮮制裁の具体策を提言し続けてきました。11月に松原先生が提出した制裁に関する質問主意書への、政府答弁を紹介します。各質問と答弁の順に編集し、一番下に質問の意図を書きました。
せめて質問一と三をやっていれば、解除を交換条件に、何人かの拉致被害者を救出できていました。やるべきことを政府がやらないから、私たちの同胞が帰ってこれないのです。不作為は、政府関係者の常套句を引用するならば「痛恨の極み」です。
20日にトランプ大統領が就任します。北朝鮮は交渉のテーブルにつくため、挑発行為を行う可能性が高いとみられています。そのときこそ、制裁発動のチャンスです。少しでも多くの制裁を北朝鮮にかけ、拉致被害者を取り返す交渉カードにすべきです。
チャンスが到来したら、どんどん政府を突き上げましょう。ぜひご協力ください。今年こそ、なにがなんでも拉致被害者を奪還しましょう!

拉致被害者救出のための圧力強化に関する質問主意書
北朝鮮による日本人拉致問題は、全く進展していない。その主たる原因は、北朝鮮が拉致被害者解放を決断する最大の要因となる我が国独自の制裁措置が、十分に実施されていないことにある。本職は、長年拉致問題に取り組み、拉致問題担当国務大臣も拝命した経験から、北朝鮮との交渉では圧力が必要不可欠との結論に達している。
そこで、北朝鮮への圧力強化の方策についてお尋ねする。
一 在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)は、法人でない社団であるが、破産法(平成十六年法律第七十五号)第十八条第一項によれば、債権者は、破産手続開始の申立てをすることができるとされている。株式会社整理回収機構(以下、整理回収機構という。)が、いまだ朝鮮総連に対して破産手続開始の申立てを行っていないのは、いかなる理由によるものか、政府が把握しているところを明らかにされたい。
一について
お尋ねについては、個別具体的な債権回収に関わる事柄であり、株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)における今後の債権回収業務に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
二 整理回収機構は、朝鮮総連から、令和三年四月一日から現在まで、幾ら回収できたか。また、朝鮮総連の整理回収機構に対する未払の債務に伴って発生した遅延損害金は、令和三年四月一日から現在まで、幾らか。政府が把握しているところを、それぞれ明らかにされたい。
二について
お尋ねについては、令和三年四月一日から令和六年十一月十四日までの間に、整理回収機構は在日本朝鮮人総聯合会(以下「朝鮮総聯」という。)から約十三万円を回収しており、また、令和三年四月一日から令和六年十一月十四日までの間に発生した遅延損害金は、約百三億円である。
三 我が国は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して、資産凍結等の措置を講じているか。講じているとするなら、北朝鮮の金正恩国務委員長に対して同様の措置を講じていないのは極めて奇異であるが、いかなる理由によるものか、明らかにされたい。
三について
前段のお尋ねについては、我が国は、プーチン・ロシア大統領に対して外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「外為法」という。)に基づく資産凍結等の措置を講じている。
また、後段のお尋ねについては、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
四 北朝鮮国営の高麗航空について、国際連合安全保障理事会(国連安保理)決議第千八百七十四号に基づいて設置された専門家パネルは、過去に公表した複数の報告書において、スカッド・ミサイルの部品の密輸に関与したこと及び朝鮮人民軍と極めて密接な関係にあることを記している。米国は、林芳正外務大臣(当時)が令和四年十一月十一日の衆議院外務委員会で答弁したとおり、高麗航空を制裁対象に指定している。我が国が、いまだ高麗航空に対して資産凍結等の措置を講じていないのは、いかなる理由によるものか、明らかにされたい。
五 我が国は、在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者の北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止措置を実施している。しかしながら、対象者は限られているため、いわゆるコロナ禍前は、北朝鮮の重要行事に多数の朝鮮総連幹部が参列していた。日本人拉致被害者が何十年も帰国できない現実を考えるとき、朝鮮総連幹部が公務のため北朝鮮に渡航できることは、不条理の極みである。そこで、再入国の原則禁止措置の対象者を、朝鮮総連の中央委員会委員約三百五十人及び専従職員の全員に拡大すべきと考えるが、政府の見解如何。
四及び五について
お尋ねについては、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
六 政府は、国連安保理において、非常任理事国の任期を務める本年中に、北朝鮮の人権状況について協議する公開会合を、再度開催するよう求めるべきと考えるが、見解如何。
六について
拉致問題を含む北朝鮮をめぐる問題が、国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)において公式に公開の場で取り上げられることは極めて重要である。我が国としては、拉致問題の重要性に鑑み、北朝鮮の人権状況について安保理で議論を行うべく尽力してきており、令和六年六月十二日、安保理において、我が国を含む安保理理事国による要請に基づき、北朝鮮の人権状況について協議するための公開会合が開催された。同会合では、我が国から、北朝鮮による人権侵害や安保理決議違反について指摘するとともに、特に拉致問題の即時解決に向けた支持と協力を強く呼び掛けた。同会合をしかるべく今後につなげていくことが重要であり、北朝鮮の人権状況について、適切な機会に安保理で議論が行われるよう、米国及び韓国を始めとする他の理事国と緊密に連携してまいりたい。
七 国連安保理決議第二千二百七十号十四の規定は、加盟国は、自国の国民でない個人が、指定された個人若しくは団体の代理として若しくはそれらの指示により活動を行っていると決定する場合には、適用可能な国内法及び国際法に従い、国籍国への送還を目的としてその個人を自国から追放することを決定した。例えば、政府は、国連制裁対象の北朝鮮工作機関・偵察総局の代理として又はその指示により活動を行っていると認定した在日外国人を、強制的に国外へ退去させる義務を負っている。政府は、国連安保理決議を誠実に履行するか、あらためてお尋ねする。
七について
我が国においては、退去強制手続を定める出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)に基づき、安保理決議第二千二百七十号の主文第十四項に定める義務を誠実に履行しているところである。
八 我が国は、国連における北朝鮮人権状況決議案の起案に関わり、提出国としてこれを採択させてきた。例えば、第六十九回国連総会本会議において平成二十六年十二月十八日、「朝鮮民主主義人民共和国における状況の国際刑事裁判所への付託の審議」及び「調査委員会が人道に対する罪を構成し得るとした行為に最も責任を有するとみられる者への効果的で対象を特定した制裁にむけた実現可能性の審議」を求めた北朝鮮人権状況決議案を共同提出し、これを採択させた。ところが、その後、日本人拉致被害者が一人も帰国していないにもかかわらず、提出国から下りてしまった。このことは、拉致問題解決に悪影響を及ぼしたと評価せざるを得ない。そこで、本年末に国連総会に提出される北朝鮮人権状況決議案について、我が国は提出国に復帰し、北朝鮮当局による人道に対する罪を阻止するためにより効果的な施策を決議させるべきと考えるが、政府の見解如何。
八について
お尋ねの「本年末に国連総会に提出される北朝鮮人権状況決議案」への対応については、政府として、諸情勢を総合的に勘案しながら、適切に対応してまいりたい。
九 国連安保理決議第二千二百七十号十七の規定は、加盟国が自国領域内で、北朝鮮国民への核・ミサイル開発に寄与し得る分野の専門教育又は訓練を防止すると決定し、禁止対象として応用物理学、応用コンピューター・シミュレーション及び関連するコンピューター科学、地理空間ナビゲーション、原子力工学、航空宇宙工学、航空工学並びに関連分野を例示した。同年に採択された国連安保理決議第二千三百二十一号十の規定は、先端の材料科学、化学工学、機械工学、電気工学及び産業工学を追加で例示し、「これらに限定されないことを明確にする。」とした。政府は、これらの規定を誠実に履行するために、いかなる施策を講じたか、明らかにされたい。
九について
御指摘の安保理決議第二千二百七十号の主文第十七項及び安保理決議第二千三百二十一号の主文第十項については、政府としては、北朝鮮籍を有する者の入国を原則禁止し、また、在日外国人である核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国を禁止し、さらに、特定技術を北朝鮮に提供する等の役務取引を禁止するという措置を講じている。
十 米国大統領令第一万三千七百二十二号は、北朝鮮政府及び朝鮮労働党の資産凍結を定め、「北朝鮮政府」とは朝鮮民主主義人民共和国政府、機関、部門及び支配下の団体を意味すると規定した。米国に拠点を有する我が国金融機関グループ等は、米国法の適用を受けるので、北朝鮮政府支配下の団体とは日本国内であっても取引をしてはならないと考えるが、政府の見解如何。
十について
お尋ねについては、米国の大統領令による資産凍結等の措置の適用に関するものであり、同国政府の見解について問うものであるため、政府としてお答えする立場にない。なお、金融庁においては、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(平成三十年二月六日金融庁作成、令和三年十一月二十二日改定)に基づき、海外拠点等を有する我が国の金融機関等グループに対して、海外拠点等が属する国の制裁に係る法規制等が我が国よりも厳格である場合も勘案しつつ、グループとして一貫したマネロン・テロ資金供与対策に係る方針等を策定し、同方針等に基づき、顧客の受入れ、顧客管理等についてグループ全体で整合的な形で実施することを求めることとしている。
十一 本職の調査によれば、国連安保理決議第千八百七十四号に基づいて設置された専門家パネルの報告書で制裁破りへの関与を指摘された貨物船の所有会社の役員を務める中華人民共和国籍の男らが、東京都千代田区に日本法人を設立していた。北朝鮮制裁破りに関与する第三国の者に対し、我が国が資産凍結等の措置を講じるいわゆるセカンダリーサンクションは、時として非常に効果的である。政府は、いわゆるセカンダリーサンクションを積極的に行うべきと考えるが、見解如何。
十一について
お尋ねの「セカンダリーサンクション」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
十二 朝鮮総連は、外交関係に関するウィーン条約(昭和三十九年条約第十四号)に規定される使節団に当たるか。当たらないならば、朝鮮総連に対して、政府拉致問題対策本部が平成二十五年一月二十五日に決定した「拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策」にある「現行法制度の下での厳格な法執行を推進する。」との施策を、「全力を尽くす。」との決定どおりに実施すべきと考えるが、政府の見解如何。
十二について
我が国は北朝鮮を国家承認しておらず、外交関係も有していない。したがって、朝鮮総聯は、北朝鮮との関係で外交関係に関するウィーン条約(昭和三十九年条約第十四号)の使節団には当たらない。
また、お尋ねの「朝鮮総連に対して、・・・「全力を尽くす。」との決定どおりに実施すべき」の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「現行法制度の下での厳格な法執行を推進する」ことについては、政府として、現行法制度の下、「拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策」(平成二十五年一月二十五日拉致問題対策本部決定)を踏まえ、我が国の対北朝鮮措置としてこれまで実施してきている各種措置等の厳格な執行に引き続き努めていく考えである。
十三 国連安保理決議第二千九十四号十一の規定は、加盟国が、北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画又は安保理決議により禁止されたその他の活動に貢献し得る金融サービスの提供を防止することを決定した。「貢献し得る」の英文原文は、〝could contribute to〟であり、一般に二割程度の貢献可能性があることを意味する。我が国は、国連安保理決議を誠実に履行するため、北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画又は安保理決議により禁止されたその他の活動に貢献する可能性が二割以上ある金融サービスの提供を禁圧する義務があると考えるが、政府の見解如何。
十三について
お尋ねの「北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画又は安保理決議により禁止されたその他の活動に貢献する可能性が二割以上ある金融サービスの提供を禁圧する義務」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、外為法に基づき、安保理決議第二千九十四号の主文第十一項に定める義務を誠実に履行しているところである。
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質問の狙いについて
質問一と二 朝鮮総連への破産申立て
質問三 金正恩への制裁対象指定
質問四 高麗航空への制裁(国内で航空券販売不可に)
質問五 朝鮮総連中央委員350人及び全専従職員への再入国禁止措置
質問六 安保理での北朝鮮人権問題公開討論を再提起
質問七 偵察総局指揮下の在日の強制送還(安保理決議根拠)
質問八 北朝鮮関連国連決議の提出国に復帰(強力な草案の起案)
質問九 在日核・ミサイル技術者の追放・朝鮮大学校理工学部の認可取り消し(安保理決議根拠)
質問十 朝鮮総連傘下企業の銀行取引停止(米金融制裁根拠)
質問十一 第三国の北朝鮮協力者への制裁
質問十二 朝鮮総連への厳格な法執行(平成二十五年政府決定根拠)
質問十三 朝鮮総連関係者の銀行取引停止(安保理決議根拠)