呉江浩中国大使が5月20日、日本国民への許し難い脅迫を行いました。中国大使館で開いた座談会で、台湾新総統の就任式に日本の国会議員が出席したことに関連して、「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言したのです。
松原仁先生は5月31日の衆議院外務委員会で、呉大使の脅迫発言が昨年に続いて2度目であることを質したところ、上川外相は「今回の発言は極めて不適切で、様々な機会を通じて我が国の立場を厳格に申し入れるなど、中国側とは必要なやり取りを明確に直接行ってきている」と答弁しました。
それに対して松原先生が「前回の抗議は全く効果がなかったという認識でよろしいか」と追及すると、上川外相は「抗議が意味なかったとは考えていない」というので、松原先生は「甚だしく大臣としては不適切な発言。結果として(大使が)同じ発言をしたということは、前回の抗議が功を奏していなかった」と批判しました。
さらに松原先生は、中国の薛剣駐大阪総領事が総統就任式に出席した国会議員に送りつけた抗議書簡が「恫喝に近いものがある」として質したところ、上川外相は「精査をすることが必要で、今後の対応については現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい」と答えました。
松原先生は5月21日にも「脅迫発言を繰り返す中国大使の追放に関する質問主意書」を政府に提出して、呉大使の追放を求めていました。5月31日に閣議決定された政府答弁書は、上川外相の答弁同様「我が国政府の今後の対応について、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい」でした。
こうした日本政府の情けない反応をみて、呉大使は脅迫が成功したと判断したでしょう。今後ますますエスカレートするはずです。


★ 誤ったメッセージ
呉大使が昨年4月28日に日本記者クラブで行った「日本の民衆が火の中に」脅迫発言は、日本の民間人を焼き殺す旨の「害悪の告知」であり、言語道断というほかありません。同じ表現を繰り返したのは、明らかに意図的です。政府は前回同様抗議だけで済ませたら、中国に誤ったメッセージが伝わり、武力衝突の危険性を高めます。上川外相は高所大所から判断すべきです。
むろん日本国民脅迫は呉大使の個人プレーではありません。2021年10月に薛剣総領事は、官職名を明示したX(当時ツイッター)アカウントで「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ!!!」と恫喝しています。
薛剣総領事の恫喝に対して、松原先生は同年に「中国の大使級総領事による台湾への「戦争」恫喝に関する質問主意書」を提出しましたが、政府答弁は「中国政府関係者のインターネット上の発言の逐一について政府としてお答えすることは差し控えたい」でした。
政府の腰の引けた姿勢が、中国の増長を招いているように思います。中国のような国に対しては、脅迫や恫喝が逆効果にしかならないことを明確に知らせ、エスカレートを防ぐ必要があります。
「こちらに戦う気があれば戦争をせずに済む。逆に戦いを避けるなら、甘く見られて戦争になってしまう」
と説く『海外出師之議』と題した意見書を提出しています。
こちらから原典をダウンロードいただけます。PDFの4ページ目左側になります。
大隈重信は正しかったです。大久保利通が北京に乗り込んで強気で交渉したところ、清国政府は日本の台湾出兵を義挙と認めて巨額の金を払うことに合意しました。貴重な歴史の教訓だと思います。

戦にかちてかへりしいくさ船
けふもかかれり品川の沖
(明治天皇御製)

戦にかちてかへりしいくさ船
けふもかかれり品川の沖
(明治天皇御製)