政府拉致問題対策本部(拉致対)HPで令和6年度概算要求の内訳が発表されました。なんら成果をあげていないにも関わらず、前年度に比べて1億6千万円も増加しています。
このなかに、本当に必要なのか疑問を感じる次の新規予算が含まれています。
〇 北朝鮮衛星テレビのモニタリング強化 5300万円
〇 人工衛星画像を活用した情報収集・分析体制の強化 3500万円
朝鮮中央テレビのモニタリングや衛星画像解析は、外務省・内閣情報調査室・防衛省が行っています。外務省を含む出向者の寄せ集めである拉致対が、独自に8800万円もの血税を使う必要があるでしょうか?
民間企業の無能営業マンを思わずにはいられません。全く業績をあげていない営業マンは、プレゼン方法やオファーを改善して一刻も早く数字を出すべきですが、往々にして業界の全体傾向を語る評論家を気取ってメンツを保とうとする者が現れます。民間であれば排除されますが、官界は市場原理が働かないので困ったものです。
拉致対は、平成25年1月25日の閣議で「拉致問題に関する対応を協議し、同問題の解決のための戦略的取組及び総合的対策を推進するため」設置されました。ならば最優先で取り組むべきは、拉致被害者を取り返すための交渉カード作りです。露朝関係の深化で「人道支援」が取引材料にならなくなった現在、やるべきは「拉致被害者を返すなら中止してもいい」と交渉するための制裁の企画立案です。
岸田総理は拉致問題について空虚な決意表明を繰り返しますが、実効性ある施策となると、松原仁先生らが実行を迫る具体案から逃げるばかりです。近く北朝鮮は外国からの入国を解禁するとみられ、朝鮮総連直営の旅行社が国営・高麗航空の手配をはじめとする北朝鮮外貨稼ぎ事業を東京のド真ん中で再開します。日本人拉致被害者は監禁されたままなのに、在日北朝鮮当局者(朝鮮総連幹部)は公務で本国と行き来するようになります。日本人観光客も訪朝するようになり、いずれ拘束される人が出るでしょう。北朝鮮は、「岸田政権はなんと嘘に満ちていることか!」と呆れているかも知れません。
今のやり方で拉致被害者を数十人単位で救出することは、創業以来赤字続きの零細企業が年内に東証一部上場を果たすくらい難しいです。


むろん、実現可能な制裁案は多数あります。
◆ 朝鮮総連への破産申立て
◆ 安保理で金正恩の人道犯罪責任を正式討論
◆ 高麗航空制裁
◆ 朝鮮総連中央委員約350人(7月21日の会議で減少)・専従職員への再入国禁止措置
◆ 大手都銀への総連関係者取引停止指導(米制裁を理由に)
◆ 朝鮮総連関係者を強制送還(安保理決議に基づく)
◆ 朝鮮大学校認可取消(安保理決議を理由に)
◆ 対北朝鮮国連総会決議の提出国(起案国)に復帰して内容厳格化
◆ 北朝鮮と取引する中国企業への制裁
◆ 金正恩の東京ディズニーランド絶叫写真(91年5月来日時)をリーク
◆ 金正恩の血の秘密(外祖父は日本軍協力者)を宣伝
拉致被害者救出のカギは、交渉カードとなる制裁の企画立案です。それ以外のことは枝葉に過ぎません。拉致対は、核心的な事柄に資源を集中させ、一刻も早く結果を出すべきです。

世の中の人の司となる人の
身のおこなひよただしからなむ
(明治天皇御製)