いま日本国内で、「北朝鮮に人道援助をすれば拉致被害者を取り返せそうだ」との希望的観測が広がっていることに危惧の念をいだいています。米政府系放送局の最近の報道によれば、北朝鮮は既に食糧危機を脱しています。

5月27日に開かれた拉致被害者救出のための国民大集会で、救う会全国協議会の西岡力会長は、人道支援で被害者を取り戻すための必要条件について「北朝鮮が困っていないならばこの戦略は通じません」と説明しました。状況が変わって通じなくなったので(元々無意味という意見も多数)、戦略を練り直す必要があります。

米政府公式放送局ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)の韓国語放送は5月22日、北朝鮮が中国からの食糧輸入を大幅に減らしたと報じました。4月に輸入した中国産の米は585万ドルで、これは3月の2175万ドルの27%に過ぎないと数字を挙げています。いらなくなったから輸入を4分の1に減らしたということです。

米情報当局と密接な関係にあるとされるラジオ・フリー・アジア(RFA)北朝鮮向け放送は5月29日、ロシアから大量の小麦粉が輸入されたと報じました。記事の日本語訳をつくりましたので下に表示します。
https://www.rfa.org/korean/in_focus/human_rights_defector/nkrussia-05292023094720.html


★ 安倍総理は「圧力しかない」

第二次安倍政権成立前の12年前、安倍総理(当時は野党議員)と議員会館事務所で面会する機会をいただきましたが、2度とも安倍総理は「北朝鮮を動かすには圧力しかない」と強調していました。そして、「自分も北朝鮮に騙されたことがある。食糧を送ったのに誰一人返ってこなかった」「一度騙された人は2度はやられない。でも役人は二、三年で異動するからね」とため息をついていました。
もしも安倍総理が生きていたら、「オイ、みんな、騙されるなよ」と警鐘を鳴らすような気がします。

abeshinzo2015

実現可能な制裁の手段は多数残っています。例えば下記です。


◆ 朝鮮総連への破産申立て
◆ 金正恩への独自制裁
◆ 安保理で金正恩の人道犯罪責任を正式討論
◆ 高麗航空制裁
◆ 朝鮮総連中央委員・専従職員への再入国禁止措置
◆ 大手都銀への総連関係者取引停止指導(米制裁を理由に)
◆ 朝鮮大学校認可取消(安保理決議を理由に)
◆ 国連制裁対象のため働いたとして総連関係者を強制送還(安保理決議に基づく)
◆ 対北朝鮮国連総会決議の提出国(起案国)に復帰して内容厳格化
◆ 北朝鮮と取引する中国企業への制裁


この中の安保理での正式討論については、松原仁先生が執拗に求めたこともあり、日米政府が共に前向きな姿勢を見せています。

今こそ基本に立ち返るべきです。





ラジオ・フリー・アジア(RFA)記事日本語訳
https://www.rfa.org/korean/in_focus/human_rights_defector/nkrussia-05292023094720.html


 最近、北朝鮮内に中国経由でロシア産の小麦粉が大量に流通していることが分かった。

 5月25日、平安北道の住民の消息筋は、「今月中旬から、新義州地域に中国から輸入されたとみられる小麦粉が大量に流通している」とし、「高額すぎて住民の手に届かなかった小麦粉の価格が下落に転じている」とラジオ・フリー・アジアに伝えた。

 消息筋は、「糧穀販売所で販売される小麦粉は2kgの輸入品だが、1kg当り内貨8千ウォン(1米ドル)で販売される」とし、「1月と2月、糧穀販売所においてコメは内貨で4500ウォン、トウモロコシは内貨で2000ウォンだった時も小麦粉は9000ウォン(1.1米ドル)で、コメより二倍は高かった」と指摘した。

 消息筋は、「多くの住民は、食糧がなくなる春の端境期である5月と6月になると、食糧価格が高騰し、餓える住民が増えると予想していた」「しかし、今月に入って小麦粉の輸入が進み、少しは安心できる」と付け加えた。

消息筋は続いて、「輸入小麦粉は2kgずつ個別包装されたもので、表面にロシア語と中国語で書かれた商品説明書がある」とした上で、「商品説明によると材料は小麦粉、原産地はロシア、輸入代理店は中国総代理店(大連)の『供給網管理有限公司』とされている」と説明した。

消息筋はさらに、「袋の説明書を見ると、ロシア産の小麦粉が中国経由で北朝鮮に入って来たのが分かる」とし、「ただ、賞味期限は12ヵ月と書かれているものの、生産日は表記されておらず、何年経った商品かはわからない」とした。

これに関し、咸鏡北道に住むある消息筋は26日、「最近、清津市の各区域にある糧穀販売所ごとに輸入小麦粉が大量に流入し、住民に販売されている」とし、「中国から流入されたロシア産小麦粉が1kg当たり内貨8千ウォンで取引されている」とラジオ・フリー・アジアに伝えた。

消息筋は「今月中旬から市中に小麦粉が大量に流入したため、小麦粉の価格が9千ウォン(1.1ドル)から8千ウォン(1ドル)へと1千ウォンも落ちた」とし、「食糧価格の動きは大抵、100ウォンから200ウォンだが、最近は、輸入小麦粉の影響により下落するなど、異例の状態だ」と語った。

また、消息筋は「しかし、輸入された小麦粉が何の目的で、いつ、どのような経路で流入されたかは明らかになっていない」とし、「ただ住民は市場内で取引されている小麦粉の表に表記された商品説明書を読んで原産地と輸入先を知るだけだ」と指摘した。

続いて、消息筋は「当局は、検察、保衛、安全など司法機関の職員や教員(教師)、公共機関の事務員に、毎月指定された配給食糧を優先的に供給していた。しかし、今月の配給には小麦粉を除いてコメとトウモロコシのみが食糧配給として提供されている」と付け加えた。

さらに、消息筋は「輸入された小麦粉が中国とロシアが支援したものなのか、それとも北朝鮮が主導的に輸入したものなのかはわからない。しかし、この小麦粉の流入によって小麦粉の値段が下落し、多くの住民が安堵している雰囲気だ」と強調した。 





Emperor Meiji uniform
いとまなき身も朝夕にいそしみぬ
おもひ入りぬるみちのためには
(明治天皇御製)