新型コロナウイルス感染症対策で国境を閉ざしていた北朝鮮が、規制緩和をはじめたようです。中国外務省は3月28日、中国共産党の中央対外連絡部副部長を務めた王亜軍氏が27日に新しい駐北朝鮮大使として同国に着任したと発表しました。中国の駐北朝鮮大使は前任の李進軍氏が2021年末に中国へ帰国した後、新型コロナ対策を理由にした北朝鮮の規制により王氏が入国できず、約1年3カ月空席でした。一番で中国大使を入国させて顔を立てたので、次はロシア外交官、それからイラン・シリア・キューバ等の同志国外交官に範囲を広げるつもりではないでしょうか?
北朝鮮は9月9日に「朝鮮民主主義人民共和国創建七十五周年」を控えています。節目の年の行事は北朝鮮にとって重要です。そのときまでに、外交官ばかりでなく、朝鮮総連幹部の一時帰国も認める可能性があります。
政府は2016年2月に、「在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者」に対して、北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止措置を科しました。つまり「北朝鮮に渡航したら日本への再入国を認めないよ」ということで、在日の北朝鮮国会議員(最高人民会議代議員)を含む朝鮮総連最高幹部が制裁対象になっています。彼らは「地上の楽園」に永住帰国する気などサラサラないですから、北朝鮮に一時帰国できなくなっています。
ところが、制裁対象になっているのは朝鮮総連のほんの一握りです。一般的にいって「在日北朝鮮当局職員」に該当する者のほとんどは、実は北朝鮮と自由に往来できます。私的な旅行だけでなく、本国に公務で出張することも自由なのです。
実際にコロナ前は、大勢の在日北朝鮮当局職員が北朝鮮に公務出張して、重要な行事に参加していました。北朝鮮国営通信社の朝鮮中央通信が報じたところによれば、上記制裁措置が発表された数ヵ月後に、日本からの出張者が朝鮮労働党第7回大会に参加しています。2018年には朝鮮総連大阪府本部委員長を団長とする祝賀団が、北朝鮮の名目上の国家元首だった金永南最高人民会議常任委員会委員長(当時)と面談して記事になっています。2019年にも、朝鮮総連中央常任委員会顧問を団長とする祝賀団が、実力者の崔竜海最高人民会議常任委員会委員長と面談して報じられました。コロナ禍がはじまる少し前には、在日本朝鮮人教職員同盟の代表団が金正恩と単独で記念撮影までしています。


おかしいと思いませんか? 私たちの同胞の拉致被害者は、北朝鮮で何十年も監禁されたままです。親世代の家族は次々と亡くなっています。ところが犯人の一味は、本国と自由に往来できるのです。拉致被害者は親の死に目に会えないのに、在日北朝鮮当局職員は金正恩に会えるなんて、いくらなんでもムチャクチャではないでしょうか?
こうしたことを許しているから、拉致問題は解決しないのです。日本政府は不作為によって、「本当は拉致なんて重要じゃありません」という誤ったメッセージを北朝鮮に送ってしまっています。すると北朝鮮は当然のことながら、もう少し待てば日本は拉致を忘れるだろうと判断します。今のままやっていて、拉致被害者を救出できるわけがないのです。
幸い松原仁先生が一生懸命動いてくれています。3月5日に「朝鮮総連中央委員及び専従職員に対する制裁措置に関する質問主意書」を提出して、中央委員365人と専従職員全員を再入国禁止対象にせよと政府に迫ってくれました。
ここで皆様にお願いがあります。ほんの少しだけお時間をください。首相官邸にメールで、「在日北朝鮮当局職員を再入国禁止対象にせよ。本国に出張させるな」とご意見をお送りいただきたいのです。
北朝鮮が近く核実験を敢行するとの見方があります。制裁強化のチャンスがやってきます。今回どれだけ制裁を強化できるかによって、今年秋以降に「拉致被害者を返せば解除してやる」といって何人救出できるかが決まります。交渉カードとなる制裁が少なければ、その分帰国できる被害者も少なくなる現実があります。外務省が面倒を恐れて制裁から逃げないように、官邸に具体策をダメ押ししましょう。ご協力よろしくお願いいたします。

たかどのの窓てふ窓をあけさせて
四方の桜のさかりをぞみる
(明治天皇御製)