松原仁先生が国会解散前、13種類もの北朝鮮制裁を提言する質問主意書を提出しました。いずれも実現可能かつ効果的な策であり、政府が実際には何もやっていないことがよく分かります。
解散のため政府答弁は出ませんでしたが、このたび松原先生は再選されたので再提出するはずです。北朝鮮による核実験の可能性が取り沙汰されるなか、政府がどう答弁するか見ものです。
質問一と二 朝鮮総連への破産申立て
質問三 金正恩への制裁対象指定
質問四 高麗航空への制裁(国内で航空券販売不可に)
質問五 朝鮮総連中央委員350人及び全専従職員への再入国禁止措置
質問六 安保理での北朝鮮人権問題公開討論を再提起
質問七 偵察総局指揮下の在日の強制送還(安保理決議根拠)
質問八 北朝鮮関連国連決議の提出国に復帰(強力な草案の起案)
質問九 在日核・ミサイル技術者の追放・朝鮮大学校理工学部の認可取り消し(安保理決議根拠)
質問十 朝鮮総連傘下企業の銀行取引停止(米金融制裁根拠)
質問十一 第三国の北朝鮮協力者への制裁
質問十二 朝鮮総連への厳格な法執行(平成25年政府決定根拠)
もう一つの「北朝鮮への大量の現金の移転に関する質問主意書」では、朝鮮大学校訪朝団による数千万円の現金持ち出し報道を挙げて捜査を求めています。当然のことながら、捜査は強い圧力になります。
「関係者によると、訪朝団を巡っては、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)側が多額の金銭を北朝鮮に持参するよう学生らに指示。今回の第1陣では、合計で数千万円程度が北朝鮮に持ち込まれたとの情報がある。
今後、第2陣、3陣とグループ単位で出国を重ね、計約140人の学生が北朝鮮を訪れる予定で、金銭などの運び込みも続く可能性がある」
これは外為法ばかりか、国連安保理決議にも違反する可能性があります。外為法により、現在北朝鮮への送金が例外的に認められているのは「人道目的かつ10万円以下の場合」です。「かつ」の文言が入っているので、両方の要件を満たす必要があります。つまり「人道目的」だと主張しても、10万円相当額を超える支払(手渡し含む)は許されないのです。
この制裁措置は、私たちが古屋圭司元拉致担当大臣に面会してお願いしたことです。快諾してくださった古屋先生は2015年6月25日に安倍総理(当時)に面会して提言して、翌年実現させました。9年前にブログで報告した通りです。
拉致問題解決への願いがこもった制裁措置であり、違反の疑いがあるなら徹底した捜査が行われなければなりません。
国連安保理決議については質問四のとおりです。安保理決議2094号は「大量の現金の北朝鮮への移転」について懸念を表明し、国連制裁が「現金伝書使を通じたものを含む現金の移転に適用する」とわざわざ書いています。「現金伝書使」とは、大量の現金を機内持ち込み荷物等に隠して密輸する運び屋のことです。運び屋というと一般に麻薬を想像しますが、黒いカネの運び屋もいます。そして後から決議された安保理決議2321号は、ダメ押しで再度「懸念」を表明し、世界各国は十分に警戒せよと求めました。
松原先生は質問五で、「大量の現金の北朝鮮への移転」とは一人の運び屋が運搬することだけでなく、集団が小分けにして大量の現金を運搬することも意味すると考えるが、政府の見解如何と問いました。これは常識レベルの話で、該当するに決まっています。というより、安保理決議を起案した専門家は北朝鮮のことを知り尽くして、かつて万景峰号で大量の現金が小分けにして運ばれたことなど百も承知なのです。
日本国憲法第98条2項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めていて、安保理決議は一般の法律より上位です。日本は北朝鮮やロシアのような無法国家ではありませんので、安保理決議を完全に履行しないといけません。松原先生の今回の質問は極めて重大です。私のほうでは財務省関税局長と外務省総合政策局長に請願書を送り、しっかり対応せよと要請しました。
今回の二本の質問主意書が、拉致問題・北朝鮮政策の指針となることを願っています。政府は、拉致被害者救出を「全力で」「強い決意」といった空虚な言葉で誤魔化すことをやめ、打つべき手を打つべきです。少なくとも13種類もの現実的な策があるのです。
北朝鮮への大量の現金の移転に関する質問主意書
産経新聞は、本年八月二十二日、八月下旬から北朝鮮を訪れていた朝鮮大学校の学生らによる訪朝団が、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)側から指示を受け、合計で数千万円程度を北朝鮮に持ち込んだとの情報があると報じた。
政府は、平成二十八年二月十九日の閣議了解「外国為替及び外国貿易法に基づき北朝鮮向けの支払を原則禁止とする措置について」を受けて、外為法に基づき、北朝鮮に住所等を有する個人等に対する支払を原則禁止とする措置を講じることとし、平成二十八年二月二十六日から実施し、その例外としては、人道目的かつ十万円以下の場合であると発表している。
そこでお尋ねする。
一 北朝鮮に支払手段等を携帯輸出し、北朝鮮に住所等を有する者に交付する行為は、禁止されている支払に該当するか、お尋ねする。
二 人道目的であれば、北朝鮮に住所等を有する者に十万円相当額を超える支払を行うことは許可されるか、お尋ねする。
三 財務省関税局長は、令和五年四月十日、各税関長及び沖縄地区税関長に対して、「北朝鮮に対する全貨物の輸出禁止措置等に伴う税関の対応について」と題した通達の「5.厳格な法執行」で、「関係部門が緊密に連携し、税関業務を一層厳正かつ的確に実施するとともに、違法行為が発見された場合には、厳正に対処すること。」と指示したが、本通達は現在でも有効か、お尋ねする。
四 国際連合安全保障理事会(安保理)決議第二千九十四号十四の規定は、大量の現金の北朝鮮への移転が、安保理決議により課された措置を回避するために使用され得ることに懸念を表明し、すべての国が、安保理決議の規定に定める資産移転防止等の措置を、北朝鮮に向けて及び北朝鮮から通過する現金伝書使を通じたものを含む現金の移転に適用することを明確にした。また、安保理決議第二千三百二十一号三十五の規定は、安保理によって課される措置を回避するために大量の現金が使用され得ることへの懸念を改めて表明するとともに、加盟国に対してこのようなリスクを警戒するよう要請した。政府は、これらの規定を含む安保理決議を誠実に履行するか、お尋ねする。
五 前項の安保理決議にある「大量の現金の北朝鮮への移転」は、一人の現金伝書使が大量の現金を運搬することのみならず、集団が小分けにして大量の現金を運搬することをも意味すると考えるが、政府の見解如何。
六 政府は、北朝鮮向けの違法な支払が発見された場合には、法と証拠に基づき適切に対処するか、お尋ねする。
右質問する。
しげりあふ森の下みち椎の実も
をりをりおちて秋風そふく
(明治天皇御製)