このたび松原仁先生が、中国従属国へのODA見直しを求めた「人権の価値観を共有しない国へのODAに関する質問主意書」を提出し、12月16日に政府答弁書が閣議決定されました。

松原先生は、国連人権理事会でウイグル人権状況への討論提案に反対票を投じて否決させた19ヶ国(本ブログ10月18日付記事をご参照ください)について、
「そもそも人権理事会は、人権侵害に取り組むことを目的に設立された。ウイグル人権状況に関する討論への反対は、人権理事会の否定であり、反対票を投じた国々は、我が国と人権の価値観を共有しないといっても過言でない」
と指摘しました。

本当にその通りだと思います。反対した19ヶ国は、討論そのものをするなと言っているのです。だったら国連人権理事会は何のために存在するというのでしょうか? 反対国は今すぐ理事国をやめ、加盟国の地位も返上するのが筋ではないでしょうか? このような反対は、ウイグル人に対するジェノサイドを助長しています。中国を勢いづかせ、犠牲者の数を増やしています。19ヶ国は大量殺人の手伝いをしているのです。人として決して許されることではありません。

そのうえで松原先生は、
「本提案に反対票を投じた十九ケ国の中に、我が国から巨額の政府開発援助(ODA)を受けてきた国が複数含まれている。人権の価値観を共有しない国への政府開発援助は、人権侵害を助長するおそれがあるので、見直すべきと考えるが、政府の見解如何」
と質しました。

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反対した国のうち、インドネシアには累計で5兆円以上、中国には3兆円以上、パキスタンには1兆円以上のODAが注ぎ込まれてきました。さらに国民一人あたりの金額で中国を大きく上回る国もあります。たとえばセネガルへのODA累計額は2020年度までで約2400億円ですが、人口は中国の80分の1の1674万人ですので、国民一人あたりでは圧倒的に多いことになります。
セネガルと中国の関係について日本外務省HPは、「中国との関係では、1996年に中国にかわって台湾を承認したが、2005年10月、中国との外交関係を回復」と書いています。2019年の主要援助国は1位フランス、2位アメリカ、3位ドイツ、4位韓国、5位カナダです。セネガル人の9割以上はイスラム教徒で、OIC(イスラム協力機構)加盟国です。「セネガルよ、いくら何でもそれでウイグルの兄弟姉妹を裏切るのは酷すぎないか! 恥を知れ!」と言いたくなります。

12月16日に出た政府答弁書はまあまあの内容でした。次の答弁が閣議決定され、政府公式見解として示されました。

「開発協力大綱」(平成二十七年二月十日閣議決定)の「実施上の原則」において、「開発途上国の民主化の定着、法の支配及び基本的人権の尊重を促進する観点から、当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」等の各原則を「常に踏まえた上で、当該国の開発需要及び経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、開発協力を実施する」とあるとおり、政府としては、諸般の状況を総合的に判断の上、開発協力援助を実施することを基本的考え方としている。各国に対する政府開発援助の具体的な実施に当たっては、この考え方に基づき、個別具体的に判断することとなる。
(「衆議院議員松原仁君提出人権の価値観を共有しない国へのODAに関する質問に対する答弁書」)

答弁書起案を担当したのは外務省ですが、おそらく最初の割り振りの段階で、財務省が合議先(あいぎさき・同意を得る必要がある)に指定されて、意向が入ったのだと思います。財務省は10月、国連のロシア非難決議に反対票を投じた国へのODAについて問題提起しました。外務省の野放図な血税バラマキはもう許さないという意思表示です。今回も何か言ったのでしょう。

ところが政府は、言っていることとやっていることが違うようです。岸田総理とセネガル大統領の首脳会談が12月19日に行われました。まだ確定ではありませんが、報道されている限りではウイグル問題が言及された形跡はありません。産経新聞は、「両首脳は、セネガルの初等教育支援のため日本が100億円の円借款を供与すると確認。セネガルの水産物の輸出拡大を後押しする約15億円の無償資金協力も申し合わせた」と報じていて、セネガルが早めのクリスマスプレゼントに大喜びしている雰囲気しか伝わってきません。

これで増税? ふざけるなと言いたくなります。中国従属国を血税で援助することは、ジェノサイド助長であるだけでなく、中国軍拡の間接支援です。敵の攻撃能力を高めてどうするのでしょう? この問題は今後とも厳しく追及していく必要があると思います。



Emperor Meiji uniform
おもふことなしをへぬまにあらたまの
年はくれにもなりにけるかな
(明治天皇御製)