安倍元総理が凶弾に斃れて6週間となりましたが、いまだに信じられない気持ちでいっぱいです。8月6日の原爆の日には、サヨク組織が広島に押しかけて「アベは殺されて当然だ!」と拡声器で叫んでいたと報道で知り、傷口に塩を塗りこまれた思いでした。

なぜ事件が起きてしまったのか煩悶のなか考えますが、警備の最大の問題は奈良県警が山上容疑者を職務質問しなかったことにあると思います。SPが2発目を防げなかったことは確かに大きな問題ですが、1発目で致命傷になっていれば成立しない議論ですし、そもそも事件を起こさせないことが一番重要です。容疑者を発見して予防できなかったことが、問題の核心のはずです。

容疑者は、これから人を殺そうとしていたのです。普通の心境ではあり得ません。SPに反撃されて、何発も銃弾を撃ち込まれて射殺される可能性も認識していたはずです。手製の銃が本番で作動しないのでは、という不安だってあったはず。全身から異様な殺気を放っていたことは間違いなく、経験を積んだ警察官が分からないはずはありません。聴衆のチェックさえしていれば、「ちょっとカバンの中を見せていただいていいですか?」と声をかけて犯行を未然に防ぎ、安倍元総理は今も精力的に活動していました。


abeshinzo

なぜ、聴衆をチェックする基本的な作業が行われなかったのか? 私は本年3月の札幌地裁ヤジ排除判決の影響ではないかと思います。判決は、令和元年に参院選候補者の応援演説中だった安倍元総理に「アベ辞めろ」「帰れ」「バカ野郎」などと罵声を浴びせた男性らを移動させるなどした警察官の行為が、表現の自由を侵害するものであり違法だとして賠償を命じました。
https://www.sankei.com/article/20220401-DRV2M3JQRJP2XEC67GT6BUILZA/

判決は、警察の行為すべてを違法としたものではありません。安倍元総理のいる演説車両に向かって突然走り出した原告の一人を警察官が制止したことについては、警察官職務執行法(警職法)第5条の要件を充足する適法な職務執行だったと認めています。

しかしながら、興奮状態で罵声を上げていた原告と聴衆との間で暴行、傷害などの犯罪が発生する危険を認めたことから警職法に基づき原告を移動させたとの警察側の主張が認められなかったことに、多くの警察官は衝撃を受けたのではないでしょうか? 確定した判決ではありませんが、無意識のうちに警備の萎縮を招いてしまったのだと思います。

表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければなりませんが、憲法第21条は表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものです。選挙運動の街頭演説へのヤジは、態様によっては公職選挙法第225条の選挙の自由妨害罪を構成します。一線を超えたら犯罪なのです。

判決文を読んで、裁判官は現場のことを何も分かっていないと思いました。小学校の学級会を想像しながら判決を書いたのでしょうか?
現実の選挙運動は必死の戦いです。原告のように敵対陣営に乗り込んで「バカ野郎」と挑発すれば、支持者との間で殴り合いになりかねません。特に選挙運動期間の終盤になると候補者・支持者ともに興奮していることが多く、危険の度合いが増します。警察官は、必要を認めたときには警職法第4条に基づき危害を受けるおそれのある者を避難させたり(つまりヤジを飛ばした者を排除)、同法第5条に基づき犯罪の予防のために警告を発したり制止したりするべきです。同法第2条に基づく職務質問を積極的に行うべきことは言うまでもありません。選挙妨害や傷害、殺人は起きる前に防ぐべきです。

ここで皆様にお願いがあります。ほんの少しだけお時間をください。警察庁を管理する国家公安委員会にメールを送って、どうせ高裁でひっくり返るトホホ判決など無視して、街頭演説会場でしっかり犯罪を予防してほしいとご要望いただきたいのです。下記送信フォームからお送りいただくことができます。健全な民主主義社会をつくるには、選挙が適正に行われる必要があります。よろしくお願いいたします。



Emperor Meiji uniform
むかしいまおもひあつめてかぞへけり
國に盡しし臣のいさをを
(明治天皇御製)