★ 国際社会は急激に動いている! 

令和3年になってまだ70日も経ちませんが、ウイグル問題を取り巻く国際情勢は激変しました。いまや国際社会の最重要課題の一つであり、日本は早急に対応しなければ自由社会の一員たる資格を失いかねません。特に強制労働を巡って日本企業十数社が関与の疑いを指摘されており、政府は今すぐ対策を打つ必要があります。

松原仁先生が出した「中国によるウイグル人への人権侵害に関する質問主意書」を引用しながら書くと、英国とカナダは1月12日、新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産された製品の輸入を阻止するための厳格な新規則を発表しました。英国のドミニク・ラーブ外相は、「この一連の施策は、政府・民間を問わずいかなる英国の組織も、意図的か過失によるかにかかわらず、新疆で行われているウイグル人や他の少数民族への人権侵害から、利益を得ることも、またこれを幇助することもないようにすることが目的である」とし、プリティ・パテル内務大臣は、「企業と公共団体は、かつてないほど警戒を強め、不注意によってサプライチェーンに強制労働が入り込まないよう確実にする必要がある」と述べました。カナダのフランソワ=フィリップ・シャンパーニュ外務大臣は、「英国とともに、新疆のウイグル人イスラム教徒への人権侵害に私たちが決して加担することのないよう施策を講じる」と述べています。

米国は1月13日、強制労働の情報があるとしてウイグル自治区で生産された綿製品とトマト製品の輸入を禁止すると発表しました。米国国土安全保障省のケン・クチネリ副長官代理は声明のなかで、「国土安全保障省は、米国のサプライチェーンにいかなる形の強制労働が入り込むことも許さない」と明確にしました。

さらに米国は1月19日、事実を慎重に検証した結果、中国がウイグル人イスラム教徒に対してジェノサイド(民族大量虐殺)と人道に対する罪を犯していると認定したと発表しました。マイク・ポンペオ国務長官(当時)は声明の中で、「第二次世界大戦の終わりのニュルンベルク裁判は人道に対する罪を犯した者たちを起訴したが、いま同じ罪が新疆で犯されている」「私たちは沈黙しない。もしも中国共産党が自国民に対してジェノサイドと人道に対する罪を犯すことが許されたならば、さほど遠くない将来、自信をつけて大胆になった同党が自由世界に対してなにを行ってくるか想像してほしい」と述べました。後任のアントニー・ブリンケン国務長官は本年1月27日の記者会見で、「ウイグル人に対してジェノサイドが行われたとの認識はそのままで、変わっていない」と継承する考えを示しています。

BBCは2月3日、ウイグル自治区の収容所でウイグル人女性が組織的に強姦され拷問されていると報じ、被害者女性の実名・顔出しの証言を紹介しました。この記事が大きな反響を呼んだことは日本でも報道されているとおりです。

英国のドミニク・ラーブ外相は2月22日に国連人権理事会でオンライン演説を行い、「新疆の状況は常軌を逸している。拷問、強制労働、女性への強制不妊手術を含む報道されてきた人権侵害の数々は、極度に酷いものであり広範に行われている。それは産業的規模で行われている」と中国を激しく非難しました。「極度に酷い」「広範」「産業的規模」という表現は米政府の人道に対する罪認定を事実上追認したものといえます。

また議会の動きとしては、2月にカナダとオランダの議会がウイグルでジェノサイドが行われていると認定する決議を採択しました。

(米政府認定と英外相演説の主要部を私のほうで翻訳して3月2日付記事に掲載しています)


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弾圧者・人民解放軍(画像:クレムリン)

日本政府は大きく後れを取っているのが現状です。歴史に学ぶべきだと思います。

1944年にナチスのテレージエンシュタット収容所のユダヤ人たちが国際赤十字社視察団の前で幸せそうにオペラを演じさせられ、終わると用済みになって虐殺された話は、いまも苦い記憶として多くの欧米人のなかに残っています。

米国では今でも「なぜ私たちはアウシュヴィッツに向かう線路を爆破しなかったのか?」が議論になっています。9年前に北朝鮮人権侵害を調べる国連調査委員会設置のためロビー活動を行っていたとき、私どもICNKのアメリカ人弁護士がニューヨーク・タイムズに投稿した論文で「線路を爆破しない不作為を繰り返すな」と論じ、大きな支持を集めたことがありました。

80年前と今の大きな違いは、当時ナチス収容所の実態が知られていなかったのに対して、現在ウイグルでなにが行われているか日本は知っていることです。アメリカ政府によるジェノサイド・人道に対する罪認定が出ているのです。

いま政府が動かなければ、子孫に大きな禍根を残すことになります。



★ 外務大臣の答弁

そうしたなか、松原仁先生が2月26日の予算委員会第三分科会で30分間にわたってウイグル人権問題を質し、茂木外務大臣から次の答弁を引き出しました。

「人権であったりとか法の支配、基本的な価値観については、日本は絶対に譲らない、お隣の中国と経済的にも深い関係があったり、様々な関係がありますけれども、だからといって、基本的な価値観について譲るというつもりは全くありません」

「絶対に」「全くありません」という大臣答弁が出たことは驚きでした。本当にその通りで、日本は絶対に譲ってはならないのです。

しかし口先だけではダメです。ウイグル人へのジェノサイドを止めるため断固行動して結果を出すことが求められています。

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松原仁先生


ここで皆様にお願いがあります。ほんの少しだけお時間をください。首相官邸ホームページの「ご意見募集」から、ウイグル人ジェノサイドに断固たる姿勢で臨むようご意見をお送りいただきたいのです。特に日本企業が強制労働に関わらないようにするため情報提供せよと求めていただけると幸いです。
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html


政府は昨年10月に発表した「ビジネスと人権に関する行動計画」の24ページで、在外公館等を通して「人権デュー・ディリジェンスの啓発を図っていく」とし、「その際に、女性や子どもを始めとする社会的弱者を含むサプライチェーンにおける労働者の人権保護の課題に十分留意する」と約束しました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008862.html


つまり在外公館が海外進出日本企業に対して、女性を劣悪な環境で一日12時間も働かせるようなアパレル下請とは取引を打ち切れと指導するという意味です。ならば米政府認定のウイグル人道犯罪の一部である「強制労働」について、より厳しい指導を行うべきなのは当然といえます。そのためには米英豪加EUと共同でウイグル強制労働関与企業のブラックリストを作って公表し、民間企業に注意喚起する必要があります。

いま日本人の正義感が問われています。ウイグル人が大量虐殺されています。行動しましょう!




Emperor Meiji uniform
世にたかくひびきけるかな松樹山
せめおとしたる突撃の聲
(明治天皇御製)