このたび情報誌『インテリジェンス・レポート』に寄稿しました。冒頭部分のみご紹介します。

本誌はプロ向けの論文集で、官公庁などで購読されています。下記から定期購読いただけます。
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「北朝鮮制裁の具体案」


制裁措置の集中を


 北朝鮮による拉致・核・ミサイル問題への取り組みは、まったく進展していない。その主たる原因は、日本をはじめ各国が制裁措置を逐次投入していることにある。戦略において最も戒められる戦力逐次投入が、拉致問題解決や北朝鮮核開発阻止といった最重要課題で行われてしまっている。

 日本外務省が昨年打った手は、さらに酷かった。拉致問題で具体的成果が出ていないのに、制裁措置を一部解除してしまった。その結果、前向きなポーズさえ見せれば果実を得られるという前例を再び作り、解決を阻害してしまった。こうした前例は、北朝鮮側が実質的な妥協をすることを一層困難にさせる。

拉致問題は時間との闘いである。家族の高齢化が進んでおり、一刻も早く被害者を救出する必要がある。そして核・ミサイル問題も日に日に深刻化しており、ただちに廃棄させる必要がある。ジョンズ・ホプキンズ大客員研究員のジョエル・ウィット氏(国務省出身)は2月、北朝鮮が2020年までに核弾頭100個を保有する可能性があるとの分析結果を発表した。『ウォールストリート・ジャーナル』電子版422日付記事によれば、中国の核専門家は北朝鮮がすでに核弾頭20個を保有していると推計し、来年までにそれを倍増させることができる濃縮ウラン製造能力を備えている可能性があるとの見方を示した。さらにジョンズ・ホプキンズ大米韓研究所は4月、北朝鮮が日本や韓国を射程に収める弾道ミサイルを約1000基保有しているとする報告書を出した。

核兵器を持つ金正恩は、不安定かつ暴力性向が強い。韓国の国家情報院は429日、国会で開かれた情報委員会全体会議で、金正恩が今年に入り4ヵ月間で15人の高官を処刑したと報告した。副首相が山林緑化政策に不満を漏らしたとして処刑され、国家計画委員会副委員長は金正恩の公共施設デザイン変更指示に「工期が遅れる」と述べたとして処刑された。また12年に17人、13年に10人、14年には41人が処刑されたと報告している。予測不可能な凶悪犯罪者が核のボタンを握っているのだ。

このままでは拉致被害者ばかりか、すべての日本人が事実上の人質になってしまう。北朝鮮が日本人を大量虐殺する能力を得れば、その威嚇力を背景に強請を行ってくることが当然予想される。解決が遅れれば遅れるほど問題は深刻になり、危険が増す。いますぐ手を打つ必要がある。

拉致・核・ミサイル問題を解決するには、金正恩政権を崩壊寸前に追い込み生存と引き換えに妥協を引き出すか、崩壊させるか、二つに一つしかない。北朝鮮が拉致被害者を返すつもりも、核ミサイルを廃棄するつもりもないことは、過去の経緯から明らかである。体制崩壊を目指した制裁措置を集中させる必要がある。

本誌『インテリジェンスレポート』では201012月号、20124月号、20137月号、20144月号・10月号で、密輸屋告発や鉱物資源禁輸、国際金融システムからの排除策といった具体的な制裁案を提案してきた。昨年10月号で論じた送金全面禁止案については著者のほうで要望書を作り、飯塚繁雄・拉致被害者家族会代表はじめ多くの関係者の賛同を得て、本年2月に外務省北東アジア課と拉致問題対策本部、平沼赳夫・拉致議連会長に面会して提出した。また自民党拉致問題対策本部が制裁案の検討をはじめるというので、57日に古屋圭司委員長(前拉致問題担当大臣)に自民党本部で面会し説明したところ、審議してもらえることになった。全面送金禁止は日本が独自に行うことができる最も強力な制裁の一つなので、ぜひとも実現してほしいと願っている。

本稿では、朝鮮総連本部ビル転売問題を中心に過去触れなかった圧迫策を提案するとともに、著者の取組みを紹介したい。

(以下具体的に)

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見境なく人を殺す凶悪犯罪者・金正恩