このたび『インテリジェンスレポート』の12月号に、「北朝鮮を資金面から締め上げる」という論文を書きました。徹底した制裁以外に解決策はないことを説明した上で、北朝鮮のシンガポール密輸ルートについて解説し、ご協力を呼びかけました。シンガポールに関しては下記内容を詳細にしたものです。

本ブログ2010年10月20日付記事

 

同誌はインテリジェンス・クリエイト社が発行している主にプロ向けの情報分析誌です。

http://www1a.biglobe.ne.jp/i-create/


一部をご紹介させていただきます。

 

 

特別寄稿

北朝鮮を資金面から締め上げる

 

一般国民ができること

シンガポール密輸ルート遮断

 

唯一の道

北朝鮮情勢の膠着状態を打破するにはどうすれば良いか?

著者は金融制裁で体制崩壊寸前まで追い込む以外に、打開策はないと考えている。妥協や懐柔は、事態を悪化させるだけである。

 

韓国の李明博大統領は昨年79日に行われたユーロ・ニュースとのインタビューで、「過去の韓国の政権は、北朝鮮に43億ユーロ(4800億円)相当の支援を10年間にわたって与えた。北朝鮮の開放を目指したものだったが、失敗した。そしていま北朝鮮は核兵器を持っているか、少なくとも作ろうとしている」と述べた。つまり北朝鮮懐柔のため莫大なカネを貢いだ結果、核開発に使われて自国の安全を脅かしただけだったのだ。そればかりでなく、北朝鮮の核拡散により全世界を危険に陥れた。もし北朝鮮の大量破壊兵器がテロ組織に渡る事態が生じたら、韓国や日本は、過去の不作為と作為を厳しく追及されるであろう。

 

一方、たったの2500万ドル(20億円)で膠着状態を打破した事例がある。しかも支出したのでなく、凍結しただけである。言うまでもなく、マカオのバンコ・デルタ・アジアに対する金融制裁である。『朝鮮日報』によれば北朝鮮高官は「血が凍る思いだ」と心境を語ったといい、制裁解除と引き換えに6カ国協議に復帰した。

 

金融制裁の絶大な効果は、すでに実証済なのである。カネの流れを遮断し、莫大な犯罪収益が隠された秘密銀行口座を凍結することで、国際社会の要求に北朝鮮を従わせることができる。

 

金融制裁が効果的なのは、金王朝存続にとってカネが核兵器より重要だからである。もしも金融制裁でカネがまったく動かせなくなると、これまで核心層に配ってきたプレゼントが出せなくなり、呉克烈のような有力者に見限られてクーデターを起こされかねない。北朝鮮人が簡単に人を見限る傾向があることを、金正日はよく理解しているはずである。そして核兵器やミサイルでクーデターを防げないことを考えると、体制存続のために最も重要なのは忠誠を買うためのカネということになる。

 

カネの流れを完全に止めれば、体制は崩壊する。だから金融制裁を徹底的に行えば、北は制裁解除の条件として核放棄と拉致被害者全員解放を実行せざるを得なくなる。この弱点を徹底的につくべきである。

 


在宅ロビー活動

それでは北朝鮮を追い込むため、日本の一般国民にできることはあるか?

著者はメール、ファックス、手紙で外国政府・議会に訴えていく「在宅ロビー活動」によって、国際社会を動かし制裁を強化できると確信している。日本の一般国民が立ち上がれば、必ずや北朝鮮を窮地に追い込むことができる。

 

当然のことながら一般人が国際政治を動かすなどという話は、常識で考えたら妄想以外の何ものでもない。そこで本年7月以降の在宅ロビー活動成功例をいくつか紹介し、実際に効果があることを立証したい。その上で現在取り組んでいる北朝鮮密輸ルート遮断のための活動を紹介し、皆様のご協力を仰ぎたい。

 

ご案内のとおり北朝鮮の外貨収入の大半は密輸による犯罪収益であり、密輸ルートを破壊することで強力な圧力をかけられる。一人でも多くの方がご参加くださることを願っている。

 


草莽の挑戦

まずは在宅ロビー活動について、拉致問題解決を欧州議会(EU全体の議会)に決議させた事例で説明したい。

 

著者は5月に、欧州議会代表団が北朝鮮を訪問予定という情報を得たので、訪朝予定議員に資料やDVDを郵送して拉致問題を取り上げるよう強く要請した。同時にメーリングリスト等で有志に呼びかけ、大勢の方にメールやファックスを送っていただいた。残念ながら訪朝は取り止めになったが、今度は欧州議会が北朝鮮非難決議を準備中だと議員秘書が教えてくれたので、再び有志とともに拉致問題を決議に入れるよう強く要請した。


これが成功したのである。欧州議会は78日に、EU市民を含む外国人拉致を強く非難し、即時解放を求める決議文を採択した。このことは新聞でご覧になって覚えておられる方も多いだろう。過去の決議で拉致問題はまったく取り上げられなかったが、日本の民間有志が訴えたら1ヶ月で採択されたのである。この決議はEUに加盟する全27カ国の外交政策に影響を及ぼし、これから徐々に効果を発揮していく。


もう一つ例を挙げたい。今年になって北朝鮮は、外資誘致で経済破綻を乗り切ろうと大豊(デプン)国際投資グループを立ち上げた。国防委員会直属の同グループは資本金100億ドル(約8000億円)で、10兆円規模の開発計画が発表された。
「これでは経済制裁が無力化し、拉致被害者を永久に取り返せない!」と危機感を感じて調査したところ、香港にペーパーカンパニーがあること、大型経済事件の刑事被告人が関わっていること、そして国連制裁決議に違反していること等が分かった。そこで719日から香港当局に対して、大勢の有志とともに捜査を求める在宅ロビー活動を開始した。


効果はすぐに出た。香港当局は直ちに捜査を開始し、全銀行に対して大豊グループとの取引を報告するよう命じたのである。英文でネット検索すればすぐに捜査開始を報じる記事が出るので、今後新規で取引する銀行は世界中どこにもないだろう。

 

成功の原因の一つは、クリントン国務長官の追加金融制裁発表とタイミングが合った僥倖である。それはともかく、日本の一般人がメールやファックスを送っただけで、北朝鮮の国家プロジェクトが頓挫したのだ。


本年度の成功例としては他にも、2月にイギリス貴族院議会で北朝鮮マネーロンダリング問題の質疑を実現させたことや、9月に英領ヴァージン諸島で北朝鮮秘密銀行口座の捜査を実現させたことなどが挙げられる。また2月にデイリー・テレグラフの取材を受け、「金正日の秘密資金40億ドル(3200億円)がルクセンブルクに隠されている」というスクープを打ってもらったが、これも金融制裁の必要性を各国に認識してもらう上で非常に役に立った。

 

なんだか自慢話のようになってしまい誠に恐縮だが、志ある一般国民が少し時間を割くだけで、国際政治に影響を及ぼせることをご理解いただけたと思う。

(中略)

 

体制打倒

北朝鮮情勢には危険な落とし穴が潜んでいる。

膠着状態が続けばアメリカは、絶対に拡散しない条件で北を核保有国として黙認することが十分に考えられる。そして制裁を解除し、以前から北朝鮮投資に関心を示していたゴールドマン・サックス等に投資させて、経済発展による体制安定化を図る可能性が高い。

 

それはわが国が絶対に受け入れられないシナリオである。核保有国の北朝鮮とは決して共存できない。わが国は国家存亡の危機に直面し、あらゆる障害を乗り越えて核武装せざるを得なくなるだろう。そうなれば拉致問題は、議題にすることすら不可能になってしまう。

 

結局わが国は、北朝鮮の体制打倒を目指すしかないのだ。国際的制裁で体制崩壊寸前まで追い込み、核を放棄させ拉致被害者を全員救出するのが理想であるが、交渉が決裂すればそのまま崩壊させるしかない。とにかく北朝鮮が核保有国として黙認される事態だけは絶対に回避しなければならない。

 

制裁強化に向けて、日本政府のより積極的な外交努力が求められる。そして一般国民も在宅ロビー活動によって、全世界に訴えていくべきである。日本を守るのは日本人だけである。